最近のご近所付き合い事情

戦後、物がなく流通も通信も不十分だった時代には人と人とのつながりが密接でした。ご近所さんのお風呂を借りて入浴する「貰い風呂」や調味料の貸し借り、おかずの分け合いといったご近所付き合いや、路上での井戸端会議は情報交換の場としての役割がありました。他人にお世話にならなくても、なんの不自由がなくなった現代では、個人主義・プライバシーの尊重といった考え方が浸透し、ご近所付き合いが希薄になっていると言われます。そういった周囲への無関心がご近所トラブルや孤独死といった社会問題に発展することも。今回は最近のご近所付き合いについて考えてみました。

立場や世代で変わるご近所付き合い

賃貸暮らしの単身者や共働きの夫婦などで人付き合いのメインは会社と友人という場合、居住地域のコミュニティーに積極的に参加する必要性がないと考えている人が多く、実際に自治会に入らなくてもよい賃貸住宅や地域を探して住むといったことをしている人もいます。戸建てや分譲マンションに住んでいても、ご近所トラブルや事件の報道を耳にすると、なるべくなら近所の人とは関わらずに暮らしたいと思う人もいるでしょう。

しかしながらコミュニティーの一員であることは避けられませんから、ご近所との付き合いは当たり障りないお天気の話など、挨拶程度にしておくと言う人が大半です。

子供がいる場合、中学生までは学校での親の役割が色々とあるため、同じ立場のご近所さんと子どもを通しての関わりが出てきます。挨拶や会話を子供に見せることで人とのコミュニケーションの取り方を教えることにもなりますし、 防犯面でもご近所の目が「見守り」になります。

シニア世代になってくると、敬老会や自治体のシニア向けイベントなどに積極的に参加し、ご近所さんとの交流を大切にする人が増えてきます。

自治会の問題 

ご近所付き合いには自治会が大きくかかわってきます。自治会活動には、回覧板、消防訓練、避難訓練、地域の運動会、夏祭り、ゴミ収集所や公園の清掃などがあり、自治会によって仕組みが違いますが、一般的に数年に一度役員が回ってきます。役員の間はボランティア(報酬がある自治会もあり)で町内と地域の行事の運営や手伝いを行います。

人付き合いが苦手な人にとっては気が重い自治会の存在ですが、自治会は任意加入ですので入らない選択もできます。自治会に加入しない世帯も多くなってきているため、会員の高齢化や役員の負担など多くの自治会が問題を抱えている現状があります。以前はどの自治会にも「子ども会」がありましたが、少子化と習い事で子どもたちが集まってイベントをすることが出来なくなり、廃止する自治会が増えています。

役員になると、活動は土日、時には平日でも駆り出されることがあるなど、会社勤めの人にとっては大きな負担になりますが、災害時の見回りや高齢者の把握、外灯のチェック、不審者情報の共有など町内の安全な暮らしを保つための大切な役割を担っています。ご近所トラブルに巻き込まれるなど住んでいて困ったことが起こった場合、まずは自治会としてトラブルに対処するという形をとるので、自治会に入っていると個人同士の摩擦が避けられるという利点があります。役所に相談に行ってもなかなか動いてくれないのが現状ですが、自治会を通して申し入れをすることで解決が早くなることがあります。

ご近所付き合いは面倒な部分が多くありますが、いざという時にコミュニティーの力が必要であることは、近年の大災害を通して実感されています。その点を考慮しつつ、適度な距離感で接するのが多くの人が望む現在のご近所付き合いと言えるでしょう。

記事作成日:2017年12月07日 最終更新日:2018年05月28日